キミは聞こえる
「―――……なにが、決まってるなの?」

 どうしてはじめから栗原さんだって決めつけてるの?

 わけわかんない。


 そもそも、泉の中では財布は、佳乃を貶めるため、二人が隠したことで決定済みだ。

 だから、その選択肢はただの思いつきで、泉はただ彼女たちの本性を確かめるために言ったまで。

 今の一言で、千紗は、自分が犯人だと認めたも同じだ。 

 泉の思惑にまんまと引っかかったというわけである。

 詰めが甘いというかなんというか……

 くだらない。

 泉の低い声に、千紗はぴくっと肩を震わせた。

「ど、どうしたのよ泉、急に」

 さっきまであれほどふてぶてしい態度を取っていたくせに、急に弱々しくなった姿を見て、泉は可笑しさがこみ上げた。

 虚を衝かれたみたいに、千紗より図太い響子までが目を見開いて泉を見ている。

 ますます可笑しくなった。

 二人してバッカじゃないの。

(こんなやつらと小学校から一緒じゃあ、栗原さんも大変だ)


「男子んとこ行ってくる」


 泉は青くなる二人を無視して部屋を出た。
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