キミは聞こえる
 本当は、あまりこういうことに使いたくはないのだけれど―――……。

(これも平穏のため)

 黙れクズ共よ。

 泉は半眼になる。

 ゆっくりと息を吐いて、吸う。また吐いて、そして吸う。それを繰り返す。

 すこしずつ、囁きのようなそれぞれの声が、肉声のはるか遠くから断片的に洩れ聞こえてくる。

《げー。あいつらマジで隠したのかよ》
《本気にするかよふつう。教師にばれたらどーすんだっつーの》
《でもまぁ、あの栗原がちくるともおもえねーけど》

 頭が痛くなった。やっぱりか。

 ついでに、こいつらだったのか、千紗たちに余計な入れ知恵をしたのは。

 財布を隠して佳乃を犯人に仕立てよう、

 などという提案をしたこいつらは間違いなく馬鹿以下だが、そんな馬鹿たちの話を鵜呑みにして実行に移す千紗たちもまったくなにを考えているんだか。

 泉は壁に体を預け、鈍痛の響くこめかみをぐりぐり押す。
 自然、ため息が出る。

 まったくどいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。

 高校生にもなって小学生のような真似をするなと思う。

 とんだ学校に来てしまったものだと改めて思い知らされた。

 これはもはや入ったクラスが悪かったとかいう問題じゃない。

 この土地に来てしまったこと自体が間違いだったのかもしれない。

 泉は彼らの声を聞きながら、父の転勤を命じた上司を念入りに呪った。
< 67 / 586 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop