キミは聞こえる
[ありがとう。 佳乃]

 さすが現役女子高生だと泉は感心した。

 自分もだろ、と突っ込むのを忘れて、泉は佳乃の顔をまじまじと見た。

「打つの、早いね」
「そうかな。周りの子に比べれば遅いほうだと思うけど」

 嘘だろ。
 みんなどんなスピードで打ってるんだよ。

 やはり通話できればそれでいいなどという考えはもはや古いのだなと泉はしみじみ思った。

「ね、ねえ代谷さん」
「ん?」

 ようやく登録作業が完了したとき、佳乃が尋ねてきた。「も、もしかして、クラスでアドレス交換したの私がはじめて?」

 だからなんだというのだろう。

「そうだけど」と眉をひそめると、佳乃は恥ずかしそうに「実は私もなんだ」と言った。

(……)

 泉は頭が痛くなった。

 だからなんだ。

 別に照れくさそうに言うことでもないだろう。
 そのようなカミングアウトをしてもらっても嬉しくもなんともない。

 むしろ激しく時間の無駄だとさえ思う。

「それはよかったね」

 そう返すと泉は部屋へ向かって歩き出した。
 それを慌てて佳乃が追いかける。

 なんだかなあと、泉は肩が重くなるのをひしひしと感じた。

(でもまぁ)

 佳乃が笑っているならそれでいいかと、泉は短く息をついた。

 泣かれる心配がないなら、それでいい。

 面倒が減るなら、それで。


(―――さて)


 部屋に戻りながら、泉は今から実行する作戦を一人もくもくと立てていた。
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