その男☆ナルシストにつき!!
「仕事みたいなものだし、心当たりがヒットしたからです。…それより、本当に体調大丈夫ですか?」


顔色が段々と青白くなってるし。


貧血の一歩手前って感じ。


「…あぁ、大丈夫だよ。ほら、ハリウッドって台本いきなり撮影前に渡されたり、急な変更なんてしょっちゅうで。しかも全文英語だから、色々と戸惑っちゃってね。まだ撮影で、アメリカに戻るんだけどね。日本にも仕事があるから、行ったり来たりの生活で。」


才能あっても、いろんな所で苦労はあるんだ。


「そうだ。ちょっと待っててください。」


そう言って、ダッシュで部署に戻ると、鍵棚からひとつの鍵を取り出して急いでエントランスに戻った。


「どうしたの?宮元さん。そんなに急いで。」


スッと、城金兄の目の前に鍵を差し出した。


「これ、使ってください。あたしが泊り込みの時に使う仮眠室なんです。休める時に、少しでも休んでください。」


少し息を切らしながら、ニッコリと笑った。


「いいの?使っちゃって。」


「はい。ここは、あたし専用ってくらい、あたししか使ってませんから。」


「ありがとう。」


笑顔で受け取ると、エレベーターに向かって歩いて行った。


エレベーターの前で城金兄は止まると、クルリと振り返った。


「どうしました?目覚ましも置いてありますから、時間いっぱいまで寝れますよ?」


「そうじゃなくてさ。弟の件もあったし、今度何かお礼させてよ。」


「いっ…いいですよ。そんなの気にしなくて。そんなつもりでやってるわけじゃないですから。」


ブンブンと大きく両手を横に振った。


「でも、俺の気がすまないから。何か考えておいてよ。」


それだけ言うと、エレベーターに乗り込んでしまった。


…そんな。


城金兄にお礼なんてされるなんて。


考えもしなかった。
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