狐と兎
キルシュはふらふらと外へ出て、ハルトと出会った場所へとやって来ました。

そこへ座りこみ、一方的だった交際の事を思い出していました。

思い出せば思い出すほどに、キルシュはハルトが恋しくなっていきました。


「会いたいよ……」


ポツリとキルシュは呟きました。

その言葉は空に溶けて消えて寂しく消えて行くのと同時に、


「僕もだよ」


と優しい声が聞こえました。キルシュにとっては今1番聞きたい声でした。

キルシュは耳を疑いましたが、空耳だと思ってまた物思いにふけろうとした時です。

何かの気配を感じ、顔をあげました。そこにいたのは愛しき人でした。
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