*  翼をください   * ー俺様柏原の不器用Loveー

偶然の再会。


店を出ると、夕暮れ時の街がオレンジ色に包まれていた。


「男のくせに、買い物長いよ。お腹ペコペコなんだから、覚悟しときなさいよ。」


食べたか食べてないか、分からないようなランチのせいで空腹な私は、イライラを募らせて言葉にした。


そんな私の腹具合を知ってか知らずか、回れ右をして、店のほうへ歩き出す柏原。


「悪い、忘れ物した。ここで待ってろ。」


柏原は、短く告げると、私を残して店に戻っていった。



ガラス越しに中をのぞくと、さっき仲良く話していた店員の女の子の方へ、近づいて行くのが見える。


忘れ物って、連絡先を聞くの、忘れたとかじゃないでしょうね!?



近くの花壇のブロックに腰掛けて、何でこんな事に付き合わされているんだろうとか、お腹が鳴り続けている状態とか、

なんだか虚しくなってきて、ボーっと道行く人を眺めていた。


丁度、帰宅時間を迎えたサラリーマンや、学生たちで、ずいぶん賑やかしい。


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