この手で紡ぐ神の欠片
*
彼の家は、住宅地の一画、
大きな家だった。
淡い茶色の屋根に
クリーム色の壁。
「へぇ、素敵じゃん」
私がそう口にすると、
ありがとう、と
私の隣の住人は言った。
「小学校高学年ぐらいに、この街に来たんだ」
詠人は続ける。
「父親が昔ちょっと住んでた街、らしい」
へぇ、と私は頷いた。
「では、どうぞ姫」
彼は玄関の扉を開けて
頭を少し下げて、
私を入るように促した。
「お邪魔しまぁす」
私は彼の家に入った。
それさえも“運命”の
罠だとは知らずに。