吹いて奏でて楽しみましょう
心配な彼女

それから更に数日後、五月に入ってから今度は二年生の女の子が一人入った。

部活ももうすぐ終了という頃、第2音楽室のドアが開き、先生と見知らぬ子が入ってきた。

「楓、ちょっと。」
先生が私を呼ぶ。

「はい。」

 わぁ、可愛い。入部希望の子?

「この子だが、フルートをやりたいそうだ。ちょっと見てみてくれ。」

 なんか先生の言い方が変?奥歯に物が挟まったような…難しい顔をしている?
「はい、わかりました。」

私が返事をすると先生はその子に向かって、

「まあ、最初は難しいかもしれないがやってみなさい。フルートの方がいいかもしれん。」

 フルートの方が?
なんか別の楽器も試したような言い方…?

「はい。」

彼女が返事をすると先生は出て行くかと思いきや、楽器庫から持ってきたフルートを取り出した。

 あれ?もうフルート準備したんだ。

「これが一番鳴りやすかったんだが…楓見本見せてくれ。」

「え?はい。」

 先生が教えるの?珍しい…。何かあるのかな?

マウスピースを外してフーと吹く。

「これがフルートを吹く時の口だ。
ん?楓、中心歪んでないか?」

「え?そうですか?」

「まあ、いいや。
とりあえず真似して吹いてごらん。」

「はい。」

その子は大きく息を吸ってフー!と思い切り吹いた。

が、鳴らない。

 まぁ、そんなの珍しくないけどね。

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