さよなら、もう一人のわたし (修正前)
「でも大学行かないんだろう? 先生が嘆いていたよ。合格者数を一人失ったってさ」

 あたしは肩をすくめる。

「でも受けたからって受かるかは分からないし、中途半端にはなりたくないからね」

 ギャラは高くない。それなら半年単位を取れるか分からない状態で学校に通うよりはきっちり割り切ったほうがいいのかもしれないと思ったのだ。

「お前は偉いよな。やりたいことがきちんとあってさ」

 弘はすっかり日が暗くなってしまった辺りを見渡しながら言った。

「そんなことないよ。わがままなだけだって思うから」

「それでもわがままを言ってもなりたいものがあるって羨ましいから」

「弘にはないの?」

「俺は結婚して、普通の家庭を持ちたいな。俺の両親みたいに」

 彼は優しい表情を浮かべていた。

 彼のそんなところはいいな、と思う。
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