さよなら、もう一人のわたし (修正前)
第十九章 春の訪れ
 何度か千春はあたしに会いに来てくれた。

 その過程で尚志さんのことも聞いた。

 尚志さんは大学を卒業し、就職したらしい。

 そして、家を出たとも聞いた。

 あたしは彼に会う機会を失ってしまったというわけでだ。

 あたしも家を出ることになっていた。

 春には別の場所でも新生活が始まることになっている。

 本当はここで暮らしたかったが、成宮監督に家を出たほうがいいと言われたからだ。

 母親に迷惑がかかる可能性もあるからだ。

 あたしの母親は派手なことを好まない人だったし、彼女に迷惑はかけたくなかった。

 だから、あたしは母親と別居することになった。

 でも、直ぐに撮影に入ることもあり、一旦、彼の事務所に住むことになった。

 撮影に使う別荘は成宮監督が持っているらしく、好きなだけ使っていいとのことだった。

 大学に進学しなかったあたしにはあまるほどの時間があったし、それでよかった。


< 272 / 577 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop