さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 夜、あたしは別荘の外で空を眺めていた。

 何も考えたくない日はそうするに限る。

 今までそんなことはなかったのに、映画の撮影に入ってから空を見ることが多くなった気がする。

「会いに行けばいいのに」

 あたしがその声に顔を上げると、そこには杉田さんが立っていた。

「いいよ」

 どうせまともに話はできないだろうから。

「そんなことないよ。多分ね」

 杉田さんはそう言うと、言葉を続ける。

「車で送ろうか?」

「だって振られたし、それなのに後をついていったらストーカーみたいだからね」

 さすがにそこまではできなかった。

 彼が好きだった。

 あたしの想像以上に彼はあたしの心を支配していた。

 だから、もう傷つくのが嫌だった。

「でも、彼との誤解を解けるのは今のうちだけかもしれないよ?」

 あたしはその言葉に杉田さんを見た。

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