さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 弘はぽつりと言った。

「そう、なの?」

「なにが?」

「千春を自分の彼女にしたいとか思わないの?」

 弘はあたしの言葉を聞いて笑っていた。

「だって無理だろう? 多分ね。あまり欲張っちゃうと嫌な奴になっちゃうし、今だけは彼女の幸せを願っていようかなって思うから」

 あたしは彼の話を聞きながら、苦笑いを浮かべていた。

「でも、弘っていいやつだよね。本当」

「身の程をわきまえているんだよ」

 彼はおどけたように言う。

 あたしはどちらかと言うと、わきまえていなかったのかもしれない、とは思う。

「ま、頑張りなよ」

「ぼちぼちね。強引に何かして嫌われるのは嫌だし」

 弘との電話を切った。

 今度千春に会ったら、なんとなく弘とのことを聞いてみようかな、と思っていた。

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