さよなら、もう一人のわたし (修正前)
 ふすまを閉めたあたしに千春が呼びかける。

「迷っているの?」

 あたしは何も言えなかった。

「でも、あたしには」

 きっと彼は千春から聞いているだろう。

 でも、彼があたしに連絡をしてくることはない。

 それが彼の答えだということも分かってたのだ。

「別に、康ちゃんのことが引っかかっていても、それは恋愛とはどこか違うんでしょう? それならいいんじゃない?」

 でも、そんな気持ちを自分ではどこかおかしいとも、許せないとも思っていた。

 知らない振りをしていたら、それですませられるだろう。

 そんな恋愛とは違う、胸を締め付けることのない気持ちだった。

 でも、尚志さんの性格を考えたら、そんなあたしを受け入れてくれると思えない。

 あたしがそう言うと、千春は肩をすくめていた。


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