天空のエトランゼ〜赤の王編〜
そして、口許を歪めると、幾多は情報倶楽部の入口を通り過ぎた。

「しばらくは、傍観者となるか。今の状況で、舞台に上がっても、単なるエキストラに過ぎないからな」

両肩をすくめると、体育館の角を曲がり、グラウンドの端の方へ歩き出した。





「ジェース!」

ジェースの姿を目にした玲奈は、階段を駈け下り、理事長室のある校舎に向かおうとした。

「玲奈!」

一階に足がついた瞬間、横合いから巨大な影が進路を塞いだ。

「ベアハング!」

すぐに、相手を見切った玲奈は叫んだ。

「退いて!」

「すまないな…。玲奈」

ベアハングは軽く頭を下げると、

「この先に、行かせる訳にはいかない」

両手を広げた。

剥き出しになった胸のオウパーツが、玲奈の目の前に現れた。

「邪魔よ」

玲奈は、左腕を突きだした。機械が起動するような甲高い金属音が、空気を切り裂いた。

二つの守り、拒絶する力は、互いを跳ね返そうとした。

しかし、突進力を加えた玲奈の拳が、ベアハングの巨体を押した。

「玲奈!」

左側の手摺の向こうから、誰かが飛び出して来た。

ベアハングの胸を押すために、真っ直ぐに伸びた玲奈の左腕に、かかとが落とされた。

「ソリッド!」

玲奈の拳は、ベアハングの胸から離れた。

「フッ」

ベアハングは、玲奈に殴られた勢いも利用して後ろに下がった。

「ケケケ」

逆に、ベアハングがいたところに、ソリッドが着地した。

「き、貴様ら!」

少しバランスを崩した玲奈に向けて、ソリッドは左足を突きだした。

それを、玲奈は反射的に左腕で受け止めた。

「やる気なの!」

「フュ〜」

ソリッドは改めて、玲奈の反応の良さに感心した。

いつのまにか、剥き出しになった玲奈の左腕を形成するオウパーツを見つめ、

「流石だな。組織の中でも、1、2を争う程の実力を持つ女…」

左足を下ろした。

玲奈は、彼らの行動の意味を知り、腕を下げた。 すると、オウパーツの表面の色や質感が変わり、人間の皮膚と変わらなくなる。

< 1,014 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop