天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「こんな攻撃が!」

熊のようになったベアハングは、ジェースの拳を避けることなく、胸を張った。

胸のオウパーツが振動し、先程ジェースがやったように、共鳴して相殺しょうとした。

「フッ」

ベアハングは笑ったが、次の瞬間凍りついた。

「ジェース?」

廊下から音が聞こえなくなった為、ティフィンは恐る恐る扉を開け、顔を覗かせた。

「な、な、なぜだ…」

ジェースの右腕が、先程サイレンスであけたベアハングの土手っ腹に突き刺さり、背中まで貫いていた。

「な、なぜ…消えない」

ベアハングがジェースの右腕を引っこ抜こうと、両手を触れた。

すると、ベアハングは指先から、塵になっていく。

「俺のオウパーツよりも…ジェースのオウパーツの方が優れているのか…」

右腕のオウパーツの振動波により、原子レベルで分離していくベアハングの体。

その勢いは速く、一瞬でベアハングの肉体は分離された。

唯一残った胸のオウパーツだけが、廊下に落ちて転がった。

ジェースは何もなくなった空間に、突きだしていた右腕を下に下ろした。 そして、下に落ちた胸のオウパーツを見下ろした。

「やったか!」

ティフィンは扉の中から飛び出すと、胸のオウパーツに近付こうとした。

「おっと」

理事長室前の開いていない窓ガラスを突き破り、ソリッドがジェースの真横に、着地した。

「!」

「まだ渡す訳にはいかない」

ソリッドは回転すると、左足をしならせ、胸のオウパーツを蹴った。

廊下を飛んでいく胸のオウパーツを見ることなく、ジェースは銃口をソリッドの額につけていた。

「ほぉ〜。オウパーツよりも、俺を殺すことを優先することはな」

ソリッドは、口許を歪めた。

ジェースの右腕が再び振動し、ソリッドのオウパーツの振動を相殺していた。

「…」

ジェースは無言で、引き金を引こうとしたその時、

「ジェース!」

胸のオウパーツが飛んでいった廊下の先に、1人の女が姿を見せた。

その声に、ジェースの動きが止まった。引き金にかける指も途中で、固まっていた。
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