天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「エルさん!」

校舎内を探していた九鬼の耳に、微かだが銃声が飛び込んでいた。

いや、銃声とは思わなかった。

異質な叫び声。

その違和感に、九鬼は駆け出し、校舎から飛び出した。



「うん?」

その銃声は、勘のよい者に響いていた。

裏門に向かって走っていた輝は、足を止めた。

「どうした?」

一緒に走っていた緑も足を止め、振り返った。

「やっぱり…やめませんか?」

真剣な顔を向けた輝の頭を、緑が小突いた。

「あほか!」




「うおおおっ!」

引き金を弾いた瞬間、サイレンスの勢いで跳ね上がった右腕のオウパーツが発動した。

真っ直ぐに振り下ろしたジェースの右腕を、玲奈から奪った左腕で受け止めた。

「はははは!」

女は笑うと、左足に力を込めた。地面を蹴る力が、ジェースの右腕を再び突き上げる。

「ジェース!」

ティフィンが思わず、叫んだ。

「たった一部分のオウパーツだけで!我に勝てるか!」

女は身を捩り、左足で蹴ろうとしたが、慣れていないのか…咄嗟に右足に変えた。

その動きが、ジェースに逃げるチャンスを与えた。後ろに飛びながら、引き金を弾いた。

しかし、胸のオウパーツに弾かれた。

「銃弾が効くか!」

女は、空振りした右足を地面につけた。

「試してみるよ」

サイレンスの勢いを使い、結構な距離を稼げたジェースは、片膝を地面につけると、サイレンスを両手でしっかりと持ち、引き金を数回弾いた。

地面を抉り、数センチ後ろに下がったが、サイレンスを連射するにはそれしかなかった。

それに、ジェースの正確な射撃が、同じ箇所に次々と撃ち抜くはずだった。それも、オウパーツで守られていない腹の部分を。

しかし、女は…振動波を出すことなく銃弾を塵にした。

「!?」

ジェースは驚愕した。

「アハハハハ!」

再び高笑いする女の後ろに、黒い影が走った。

「ルナティックキック!」

右足のレッグラリアットが、女の延髄に決まった…はずだった。

「何!?」
< 1,057 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop