天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「うおおおっ!」

旧防衛軍崩壊後も、人々の為に戦ってきた人々から咆哮のような歓声が上がった。

「フン」

その興奮に似た歓声を聞きながら、カレンは結界を越えた。

「バカ師匠が!姿を消したと思ったら〜」

はあっとため息をつきながらも、カレンの表情は笑っていた。






「う〜ん」

同時刻、首を傾げる存在がいた。

ジャスティン・ゲイである。

今流れている放送は、録画だった。

最初、結成を伝えるだけの放送をジャスティンは望んだが、周りの者達が反対した。

その為、仕方なく壇上に立ったのだ。

「客引きパンダも疲れるな」

カレンとはほぼ反対になる…アルプス山脈を越えて、魔界に入るルートを、ジャスティンは歩いていた。

カードから流れる音声に苦笑しながら、万年雪が降り積もる谷底に目をやると、ジャスティンは呟くように言った。

「この景色を見れば、わかるだろう。自然の前では、人間はちっぽけだと。いや、すべての前で、人間は小さく無力だ。だからこそ、人間は…1人では生きていけないと気付き、他人を大切にしなければならないと思う」

ジャスティンは、足下に広がる谷底から目を前に向けた。

「だけど…人間は、無力であり、無知だ。だから、経験なしでは、その大切さを理解できない」

ジャスティンは、ゆっくりと構えた。

前方から近付いてくる影に、気付いたからだ。

「ケケケ!」

それは、毬藻に漆黒の翼をつけただけの魔物の群れ。

「人は、飛べなくてよかったと思っている。もし、空まで飛べたならば…人間はさらに、高慢になっていただろうからな」

谷底に落ちる心配のない魔物達は、空中を伸び伸びと疾走する。

「だが…少しは羨ましいな」

少ない足場と周りの地形…そして、向かってくる群れの動きを頭に叩き込むと、ジャスティンは魔物に向かって飛んだ。

「フン!」

カウンターのようになったジャスティンの手刀が、突進してくる魔物の翼を切り裂いた。

「ぎゃああ!」

叫び声を上げる魔物の黒い体毛を掴んだ。

「確か、貴様らに毒はなかったな!」
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