天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「ああ…そうか」

アルテミアは納得した。

「どうしたの?アルテミア…」

「…」

すぐには答えずに、悲しげな目をしばらく街に向けた後、ぽつりと呟くように言った。

「…ここに来たことがある…3人でな」

アルテミアの言葉に、僕ははっとした。

ブルーワールドに来るようになって間もない頃…僕が見た夢。

人々を殺し、血を啜るマリーとネーナ。そして、上空で黒い翼を広げ…雷鳴に照らされたアルテミアの姿を。

(そうか…)

僕は、街の人々の異様な怯え方の理由がわかった。

「まあ〜仕方がないな。あの頃のあたしも、あたしだ」

アルテミアはフッと笑うと、目の前に用意された料理の山に視線を移した。

「頂くぞ!」

「ア、アルテミア?」

「折角用意してくれたんだ!全部食べるぞ」

「む、無理でしょ」

量が多すぎる。

「あたしを誰だと思っている!」

アルテミアは大量の料理に、立ち向かった。

数分後、出されたものをすべて平らげたアルテミアは、空になった皿の向こうにいる街の人々ににっと笑うと、

「ご馳走様」

翼を広げて、空に舞い上がった。

「アルテミア!支払いは!」

僕が、慌てて訊いたが、

「いいよ」

アルテミアはそれだけ言うと、一気に街を越えた。

「アルテミア!駄目だよ!ちゃんと払わないと!」

僕の悲痛な声にも、アルテミアは答えない。

ただ街を越えると旋回し、その周囲半径数十キロを飛び回りながら、地上に思念を送った。

(野の魔物達よ!あの街は、我のテリトリーなり!もし、手を出すようことがあれば!)

アルテミアの目が赤く輝き、魔力が放射された。

(天空の女神が、貴様らを殺す!)

その魔力と殺気に、街の周りにいる魔物達は震え上がった。

「ア、アルテミア…」

「フン!」

アルテミアは鼻を鳴らすと、旋回をやめて、一気にその空域から飛び去った。

「あたしがやった罪は消えないし、今更勇者ぶることもしない!お母様も、最後は裏切り者と呼ばれたけども、誰よりも人の為に頑張ったことを、あたしは知っている!」

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