天空のエトランゼ〜赤の王編〜
そして、リンネは眉を寄せながら、男に最後の質問をした。

「ところで…あなたの連れ合いは、産んだ子供の死体に悲しんでいるけど…あなたは、何の感情もないのね」

「…」

リンネの質問に、しばし無言で見つめた後、男はおもむろに口を開いた。

「…人間の男とは、産まれたばかりのものには何の愛情も感じないものと聞いております。育てる過程で情がうまれると…産まれたばかりのものに、ああいう感情を持つのは、おかしいと…」

「あ、あなた…」

リンネは、目を見開いた。

「人間の男とは、そういう存在だと認識しております」

「…そうかもしれないけど」

リンネはため息をつき、

「そんな人間は、つまらない男よ」

男に背を向け、歩き出した。

そんなリンネを見送りながら、男はただその場で立ち尽くしていた。

広場に集まった魔神達は混乱し、戸惑っていた。

「今日はこれで、解散だ!お前達は、ただ今いる人間を抹殺することだけを考えよ!」

そんな魔神達の前に立つと、サラは城から去ることを命じた。

「は…は!」

おかしな雰囲気が漂うこの場から、一刻も早く立ち去りたい魔神達は、素直にサラの言葉に従い、城内から消えた。

「王は…ご乱心か?」

サラの横に、カイオウが来た。

「!?」

サラは眉を寄せた。

「あんなものは、魔神でもない。そして、人間でもな。戯れで創られたとしても、存在が醜く過ぎる」

「カイオウよ…」

サラは、去っていく魔神達を見送りながら、カイオウの方を見ずに言った。

「我らに、王の深いお考えは理解できない。それに…」

サラは歩き出した。

「王のことを疑うことも!中傷することもするな!カイオウ…貴様であろうと許さん!」

「!」

サラの殺気のこもった口調に、カイオウは息を飲んだ。

そして、その後ろ姿をしばし見送った後、カイオウはため息をついた。

「忠誠心だけではあるまいて…」

サラの背中を見つめながら、カイオウは逆の方向に歩き出した。

「悲しい女だ…」

すべての魔神がいなくなった後…広場には男女だけが残った。
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