天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「赤星…」

アルテミアの感嘆の声を聞きながら、僕はライトニングソードを地面から引き抜いた。

すると、ライトニングソードは分離し、回転しながらどこかへ消えて行った。

「…」

僕は何の感情もない虚ろな瞳で、前を見つめていたが…ゆっくりと目を細めた。

「どうした?」

僕の微妙な変化に気付いたアルテミアが声をかけた瞬間、その者は空間からしみでたように姿を見せた。

「こ、こいつは!」

アルテミアは、驚きの声を上げた。

なぜならば、数時間前に確かに殺した相手が、前にいたからだ。

全裸の女。人間もどきの母だ。

女はじっと僕を見つめた後、声を発した。

「素敵!」

女の目の色が、一瞬で変わった。きらきらと輝く乙女のような瞳に、僕はさらに目を細めた。

そんな僕の心境もわからずに、女は胸の前で腕を組むと、

「今まで子供を産むことは、義務のように思っていたけど!あなたの子供は、産んでみたい!」

今度は目をとろんとさせ、身をよじり、

「こ、これが〜噂に聞く愛!」

両手を広げた。

そんな女の言葉を聞いて、アルテミアは吐き気をもよおしていた。

「赤星…やれ」

吐き気が治まると、冷淡な口調で命じるアルテミアを…何とか無視して、僕は女に言葉を投げ掛けた。

「愛?お前には、相手がいるはずだ。あの男を…愛していないのか?」

「愛?」

女は、僕の質問に嫌な顔をした。

「?」

その表情の変化を訝しげに見た僕に、女はじっと僕の目を見つめながら、言葉を続けた。

「愛なんてないわ。ただの義務。できちゃった結婚みたいなものよ」

「で、できちゃった結婚って…」

言葉を失った僕を見て、女は懇願するように、

「あなたとの子は違う!大切にするわ!」

すがるように言った。

「な」

思わず絶句した僕の耳許で、アルテミアが叫んだ。

「ごちゃごちゃうるさい!あたしに変わりやがれ!」

「う、うん…」

無意識に頷いた僕から、アルテミアに変わった。

「天空の女神!」

女は苦々しく、アルテミアを睨んだ。
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