天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「見えた!これが…世界を覆う結界」

魔界と世界を分断する結界の前に、僕とアルテミアは来ていた。

東アジアから、東ヨーロッパまでを横断する巨大な結界は、強力な魔物を人間が住む側に入れない為に、先人達によって造られたと言われているが、定かではない。

それに、神レベルと言われるもの達は容易に通り抜けることができた。

勿論、今の僕やアルテミアが通れないことはない。

今までは律儀にも、結界の隙間を通って魔界に入っていた。

どうも…結界を直接通るのが、忍びなかったのだ。

「いくぞ!」

アルテミアは翼を広げると、一気に結界へとぶつかっていった。

まるで光のカーテンのような結界は、単なる映写された映像のように、まったく何も感じさせずに通ることができた。

しかし、結界を通り過ぎた時、違いははっきりとした。

空気が違う。

澄んでいるのだ。

「ここが…魔界」

「懐かしい匂いだ」

アルテミアは少しだけ感傷に浸ったが、すぐに表情を引き締めた。

「アルテミア!」

「ああ…わかっている」

少し離れた場所で、巨大な魔力を感じられた。

「この気は、サラか」

アルテミアは、巨大な魔力の正体を知った。

「誰かと戦っているように、感じるけど…」

サラが戦っていると思われる相手からは、魔力を感じられなかった。

しかし、凄まじい気のようなものを感じ取れた。

「人間!?」

僕は、驚いた。さらに詳しく探ってみた。

「人間もどきではない!普通の人間なのか?だけど…この強さは…魔神をこえている」

信じられない強さを感じた僕は思わず、唾を飲み込んだ。

「すごい」

今、肉体はアルテミアが使っているが、僕は体が震えるのがわかった。

いや、魂が震えているのだ。

「…」

アルテミアは無言で、サラの魔力が感じられる方向を見つめていたが、すぐに前を向いた。

そして、一気にスピードを上げた。

「アルテミア?」

サラの方に行くと思ってしまった僕の思惑を置いていくかの如く、アルテミアはジャングルの上を疾走する。

「フン」

アルテミアは、軽く鼻を鳴らした。彼女の脳裏には、ある映像が浮かんでいた。
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