天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「つまり…人間は、意志の強さがあれば…奇跡を起こせるのさ」

アルテミアは、プロトタイプブラックカードの全魔力を使い、全身火傷を治癒した。

それにより、完全には回復しなかったが、火傷で死ぬことはなくなった。

「あたしは、魔王にだけつくられた訳ではない!人間のお腹の中から生まれたんだ」

「だから、魔力を使わないと?」

リンネは、肩をすくねて見せた。

「あたしは、人間の可能性にかけたい」

「何を言ってるの?」

まるで、陽炎のように揺らめいたと思えば、リンネは真後ろからアルテミアに攻撃をしかけた。

「く!」

アルテミアは顔をしかめた。防御したとはいえ、また火傷ができた。

「さっさと、魔力を使え!バンパイアになれ!」

リンネの拳が、アルテミアの鳩尾に突き刺さる。

「うぐぅ!」

血を吐き出しても、アルテミアは魔力を使わない。

「死にたいのか!」

リンネは叫びながら、突進してくる。

「だったら、どうして…さっき、あたしを灰にしなかった」

アルテミアは避けることなく、構えた。

「弱いままのお前を倒しても、意味がない!」

リンネの腕が炎の剣になり、アルテミアの額を狙う。

ギリギリのタイミングで、アルテミアは首を曲げて、剣の串刺しを避けた。

「痛みだよ」

アルテミアは避けると同時に、前に出た。

リンネとすれ違う瞬間、耳元で囁いた。

「バンパイアの肉体では、感じることのできない痛み。人間はこんなにも弱い肉体で、戦ってきた」

「な!」

リンネの体に、傷が走っていた。

「痛みを伴いながらも、前に進んできた」

「ば、馬鹿な」

アルテミアの手には、ドラゴンキラーが装着されていた。

「傷付いた痛みを抱えながら、神の領域まで来たんだ!」

「ア、アルテミア!」

リンネは振り向き、睨み付けた。

「モード・チェンジ!」

アルテミアは、叫んだ。

黒いスーツ姿のフラッシュモードに変わった。
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