天空のエトランゼ〜赤の王編〜
変身が解けた九鬼は、光の放たれる方を見つめた。

太陽のように輝いていた光は、こちらに近づく程に収束して小さくなっていくのが、わかった。

グラウンドを囲むフェンスが邪魔して見えなくなった時、九鬼ははっとして、走り出した。

グラウンドを飛び出し、正門までの一本道に身をさらした九鬼は、近づいてくる光を凝視した。

あれほど眩しかった光が、車のヘッドライトくらいの輝きになった時、

光の中から…1人の人間が姿を見せた。

(男?)

正門を潜る頃には、光は消え…顔はわからないが、学生服を着た人間であることが肉眼で確認できるようになった。

九鬼は息を飲んだ。

魔力も、強い気も感じないが…九鬼には、その存在が神に見えた。


ゆっくりとこちらに近づいて来る男は、九鬼に気付くと、小走りになった。

「すいません」

男は、満面の笑顔を浮かべていた。

不覚にも、その屈託のない笑顔を見た時、九鬼はキュンとなった。

神と思った男が、あどけない少年だったからだ。


「あのお〜」

少年は鼻の頭をかき、

「今日から、ここに通うことになった者何ですが…」
周囲をキョロキョロと見回すと、

「少し早すぎましたかね…」


確かに…まだ真夜中だ。

加奈子と戦ってから、数時間しかたっていない。

「そうね…」

九鬼は、少年を下から上まで確認すると、

「でも…助かったわ」

右手を差し出した。

なぜだろうか…。

初対面なのに、そんな感じがしなかった。

何の警戒もせずに、握手を求めた自分に、心の底では驚いていた。

そんな行動をしてしまっ理由を、九鬼はすぐに知ることになる。


九鬼が差し出した腕を、素直に握った少年に、九鬼は笑いかけた。

「ようこそ…大月学園に。あたしは、ここの生徒会長九鬼真弓です」

少年も笑顔で返し…こう言った。


「赤星浩也です。よろしくお願いします」
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