天空のエトランゼ〜赤の王編〜
城から出てきた僕の前に、アルテミアが現れた。

「よおっ!勝ったのか?」

軽く訊いてきたアルテミアに、僕は無理して微笑んでから、こたえた。

「違うよ」

そして、ことの結末を説明をした。

「そっか」

すると、アルテミアは僕の横を通り過ぎ、城の前に立った。

「あいつ…お母様を愛してたんだな」

そして、嬉しそうに呟いた。

すれ違う時、アルテミアの瞳に涙が溢れていたことに気付いたけど、敢えて触れなかった。

「よかった…」

僕の後ろで、声を殺して泣くアルテミア。

僕は振り返ることなく、ただ目を瞑り、そばにいることにした。




魔王ライの死は瞬く間に、世界に広がったが、人々が喜ぶことはなかった。

なぜならば…次の王座についたのは、あの…地上最悪、最強と言われる…ブロンドの悪魔だったからだ。

「アルテミア様のおなあ〜り!」

蛙男の声に導かれ、玉座の間の扉が開いた。

魔神達が左右に立つ赤い絨毯の上を、颯爽とアルテミアが歩く。その身に、白い鎧を纏って。

玉座の右横には、ギラとサラが…左横には、カイオウが控えていた。

ゆっくりと優雅に…そして、少し顎を上げながら歩くアルテミアが玉座についた時、新たなる時代が始まったのだ。

「アルテミア様!」

城中に、歓声がこだました。

いや、魔界中の魔物が、雄叫びを上げた。

その声は、世界を震撼させた。

防衛軍の最高責任者であるジャスティン・ゲイは直ぐ様、病院からおめでとうのメッセージを魔界に送った。

ブロンドの悪魔の即位は、人々に新たなる不安を与えた。

しかし、人々はそんな中でも、希望を捨てなかった。

なぜならば…。

「勇者…赤星浩一がいるからである」

数日後、僕はアルテミアに呼び出されていた。

ここは、ロストアイランド。

一度、大陸そのものが焼きつくされたが、少しずつ自然が戻ってきていた。

「どういうことよ!」

アルテミアの苛立ちは、止まらない。

「あたしが、悪魔で!あんたが、勇者さま〜あ!納得できるか!あたしだって、お母様みたいな勇者になりたかったのに〜い!サラ達が、無理だって言いやがるし!」
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