天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「いってきます!」

元気良く玄関から、飛び出した少女を、家の中から母親が呼び止めた。

「麗菜!忘れものよ」

「あっ!」

足を止めた少女に、玄関まで出てきた母親が、携帯電話を手渡した。

「いってきます!」

慌てて引っ掴むと、少女は駆け出した。

「学校?」

見送る母親の後ろから、声がした。

母親が振り返ると、1人の女性が立っていた。

「沢村さん」

母親と沢村と呼ばれた女性は、軽く会釈した。

「そう…もう高校生なのね」

「ええ…」

母親は頷いた。

「お互い…1人娘だと、苦労が絶えないわね」

沢村の言葉に、母親は何も言えなくなった。

「赤星さんが、うらやましいわ」

沢村はそう言いながら、麗菜の後ろ姿を見送っていた。

いなくなった娘の後ろ姿と重ねながら…。


「ところで…学校はどこなの?」

沢村は、母親に訊いた。

「大月学園よ。大路学園の近いんだけど…どうしてか…あそこには、行かせたくなかって…」

そこまで言って、母親は気付いた。

「ご、ごめんなさい」

「いいのよ」

沢村は笑った。

彼女の娘は、大路学園に通っていたのだ。



「遅れちゃう!」

学園への道を急ぐ麗菜。

しかし、彼女は突然…足を止めた。

空を見上げ、耳をすました。

「歌が聴こえる」

そう言って、立ち止まった彼女の足下には…砂がたまっていた。

キラキラと輝く砂が…。

「鎮魂歌(レクイエム)が聴こえる」



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