天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「命が消えた!?」

西館の裏側を、特別校舎に向かって歩く浩也の目から、一筋の涙が流れた。

「切ない…思いが消えた…!?」

と思った瞬間、浩也は足を止めた。

「切ないとは何だ?」

溢れる思い…とめどもない思い…歯痒さ…温かさ…そして、やりきれない…切なさ。

たまに、心をかきむしる…これらの思いが、浩也を混乱させた。

考えれば考える程…答えのない世界をさ迷う。

もう少しで…あと数メートル先を曲がるだけで、特別校舎に行けるのに、浩也の足は止まってしまった。

「どうして…」

浩也は、瞳から流れた涙を指で拭った。

「こんなものが流れる?」

指についた涙を見つめる浩也の前に、何者かが立ちふさがった。

「心無き…人形のはずなのに、お前達は…形無きものに、惑わされている」

「!?」

前を見た浩也は、その者を知っていた。

それは、自分でもわからない記憶ではなく…はっきりとした浩也としての記憶の中に。

「あなたもそうよ。魂のない…単なる人形のはずなのに、今も向かおうとしている。その理由は何?」

浩也を見つめ、その心の中まで覗こうとしている女の名は、リンネ。


「お、お前は!?」

フレアと過ごした最後の日に、ジャングルであった魔神。

構えようとする浩也に、リンネはただ言葉を続けた。

「それが…愛なの?」


「愛?」

浩也は、眉を寄せた。

わからない…いや、学んだ言葉ではあったが、なぜか…よくわからなかった。

いや、わかっているのかもしれない。

だけど、今は…わからない振りをしょう。


(わからない振り?)

浩也の思考が、まるで自分の思考とは思えなかった。

何を考えている。

何を思っている。

僕は、何を隠している。

(隠している!)

誰に対して。

己に対して。

どうして。

どうしてだ。



浩也の心に、疑問をわきあげる。



その時、

心の中で、誰かの声がした。

(考えるより、願え)
< 274 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop