天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「な…」

今度は、化け物達が絶句した。

そして、間を開けてから、大笑いし出した。

「ははははは!何を言うか!どうして、我々が家畜から生まれるのだ!」

「誇り高き、炎の騎士団に所属する我等を愚弄する気か!下等動物の分際でな!」

突然、魔物の肉体が炎そのものに変わった。

「な!」

驚くよりも速く、九鬼は音速に近いスピードで、魔物達の前から消えた。

今まで九鬼が相手をしてきた化け物は、人間から生まれたり、変化したものばかりだった。

妖怪と言われる存在も噂には聞いていたが、会ったことはない。

(確か…兜博士が、仮説として…妖怪や悪魔の一部が人に交わり、転生し…何らかの影響で、目覚めたのが、闇の正体と言っていたが)

九鬼は、戦う場所を変えようとしていた。

(月の光がもっと届くところで!)

空き地からでようとした瞬間、九鬼の前に炎の壁が、できた。

九鬼の肩が、炎に触れてしまった。

「ク!」

戦闘服が焼け、苦悶の表情を浮かべながら、九鬼は空き地内に落下していく。

「九鬼!」

一緒に落下した夏希は、空中で体勢を変えると九鬼を抱え、着地した。

「やっぱり、量産型の乙女スーツじゃ駄目なんだよ!あ、あたしの戦闘服で」

夏希は眼鏡を取り、九鬼に変えようとするが、恐怖で手が震えて上手くいかない。

「さあ〜丸焼きで、頂こうか」

化け物…いや、炎の魔物達が、二人に迫る。

「逃げて!夏希!あたしが囮になる」

九鬼は、眼鏡を外そうとしている夏希を手を止めると、自ら前に出た。

「この生意気な下等生物は、俺が喰う!」

牛の魔物が口を左右に裂け、鋭い牙が見えた瞬間、九鬼達の後ろの炎の壁も左右に裂けた。

そこから、空き地内に飛び込んで来た学生服の少女に、九鬼達は驚きの声を上げた。

「理香子!」
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