天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「チッ!」

九鬼は舌打ちすると、スカートのポケットから、乙女ケースを取り出した。

(神を殺せる力!)

一瞬だけ躊躇ったが、九鬼は乙女ケースを握り締めると、前に突きだした。

「そうちゃ」
「九鬼!」

変身を邪魔するかのように、後ろから九鬼の頭上を飛び越えて、戦闘服を着た戦士達が守るように前方に着地した。

「話は聞いた」

「ここは!」

「あたし達に任せて!」

乙女ブラック(蘭花Ver)、乙女ピンク、そして乙女レッドが九鬼を庇うように、闇達に向かって構えた。

「理香子と夏希が、つかまらない」

ゆっくりと歩いて来て、変身もせずに傘をさし、その中で携帯をいじりながら登場した蒔絵が、九鬼の方を見ずに話した。

「わかった!」

九鬼は頷くと、迂回するように走り出した。

「行かすか!」

針を生やした闇が、ほくそ笑みながら、九鬼の進路をふさいだ。


「装着…」

携帯を閉じると、蒔絵が呟くように言った。

乙女グリーンとなった蒔絵は、変身と同時に、攻撃に転じた。

傘を前に投げ、手元を見えないようにした。

すると、傘に向こうから無数の光の輪が飛び出し、回転すると、無軌道で闇達に襲いかかった。

針を生やした闇の体も、針の束ごと切り裂いた。

「何だと!」

唖然とする闇の隙をついて、九鬼は一気に路地裏を駆け抜けた。

蒔絵の先制攻撃が合図になり、乙女ソルジャーと闇の戦いが幕を開けた。

「みんな!ありがとう!」

九鬼は、路地裏を抜けると、左に曲がり…公園に急いだ。



一方…その頃、学校から公園までの最短距離である裏門から真っ直ぐの道を、あたしは走っていた。

どしゃ降りの為、いつもより時間がかかっていた。

学校にいるときはいつも…携帯電話はマナーモードにしていた。それを切ることを忘れてしまっていた為、あたしは…里奈達からの電話にも気付かなかった。

それに、携帯を見るよりも…中島のもとに一刻も早く行きたかったのだ。
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