天空のエトランゼ〜赤の王編〜
女の姿が変わる。

筋肉が盛り上がり、剣を握る力が増す。

「唸れ!ライトニングソードよ!」

天に突き上げると、突然天に雷雲ができ…雷鳴が剣に落ちた。

「うおおおっ!」

そして、雷鳴を纏ったまま、女は走りだした右手に向かって。

剣先を下に向けて、走る女。

雷鳴は、地面を抉る。

「いけえ!」

そのまま、前に振り切ると、雷撃は地面を抉りながら川まで、飛んでいった。

「は!は!は!」

それを何度も繰り返すと、地面に水路ができた。

「は!は!は!」

水路の向こう側に飛ぶと、同じことをもう一度やって、水路の幅を広げた。

そして、最後に、渓谷の出口を塞いでいる岩や土石の水路側の横手を、雷撃で破壊した。

渓谷いっぱいに貯まっていた水が、行き場を貰い、一気に噴き出した。

最後に一振り、水路を抉ると、女は迫り来る水を見つめながら、再び叫んだ。

「モード・チェンジ!」

再び女の姿が変わった。

筋肉は縮んだが、瞬発力が増した。

女は濁流から逃れ、安全な場所まで移動した。

水の流れを見つめながら、剣を地面に突き刺して、休む女は、一応ブラックカードを確認した。

「残高…ゼロか。魔力の補助の仕方を考えないといけないわね」

激しく肩で息をしていると、後ろから十字軍の兵士達が走ってきた。そばには、軍事訓練された妖精達が飛んでいた。

妖精達と契約することで、彼らは魔法を使うのだ。

岩場を崩し、土を抉っただけの水路を補強し、きちんとしたものに作り上げていく。

「あとは…専門家に任せましょう」

女が剣を抜くと、再び分裂し、回転しながら、どこかに消えていった。

振り向くと、明らかに一般の兵士とは階級が違う軍人が立っていた。

白い軍服の真ん中に赤の十字架が、異様に目立っていた。

軍人は女に敬礼し、

「ティアナ・アートウッド様とお見受け致しますが!」
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