天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「クッ!」

ライは、唇を噛み締めた。新たな女神を創造する時に、どこかで母親をイメージしたのかもしれなかった。

死ぬことができない呪いをかけられ、自分を殺すことのできる存在を探す為に、異世界をさ迷っていた母親を。

結果…空牙が、母親を殺すことになった。

自分を産んだ後、自分を生かす為に…呪いをかけられた母親を、空牙は殺した。

それが、母親の願いだったからだ。

新しい女神を創る時…母親に生きる自由を与えたかったという…後悔の念を持っていたことは確かだった。


(似すぎだ)

ライは拳を握り締めた。

「クッ!」

顔をしかめると、虚ろな目をした女神に、手を突きだした。

すると、女神の全身が繭のようなものに包まれた。

「もう一度、創り直す!連れていけ」

「は!」

サラは立ち上がり、繭を掴むと、玉座の間をあとにした。


「クソ!」

右手で頭を押さえ、玉座に座ったライの左手に…アスカの手が重なった。

「何をしている?」

ライは右手を下ろすと、アスカを見た。

「わ、わかりません」

アスカは慌てて…手を離した。

自分の行動に、狼狽えながら、アスカは言った。

「ただ…あなたが、辛そうだったから…」



「何!?」

それは、アスカの優しさだった。

しかし、その時のライには、自分を見つめるアスカの目が、憐れんでいるように見えた。

「貴様!我を愚弄するか!」

母親のこと…それが、ライの心に大きな傷をつけていた。

その傷こそが…圧倒的な神と同等の力を持つ自分のトラウマになっていることに、ライは気付かないようにしていた。

それなのに、創った女神が余りにも似ていた為、ライは…嫌が追うにも、このことを見せつけられてしまった。




玉座の間に、鮮血が舞った。

横一文字に目を、指先で斬られたアスカは…完全に視力を失った。

目から血を流しながら、床に崩れ落ちるアスカよりも、ライは……先程の女神が立っていた空間を見ながら、歯を食いしばっていた。



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