天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「魔力が使えないだと!?」

十字軍本部中央司令室は、騒然となっていた。

あらゆる魔力が、使えなくなったのだ。

それにより、中央システムは完全に動きを止め、バックアップさえ取れなかった。

この世界の魔力は、実世界における…電力や風力などのすべての動力の役目を担っていた。

「契約していた精霊の反応が、消えました!」

「妖精達も消滅!」

たった数秒で、防衛軍――いや、人類全体の動きは止まった。

各種通信システムも使えなくなった為に、連絡は足で伝えるしかない。

各ブロックを結ぶ通路を、人々はぶつかりながらも、走り回った。

「伝令!」

司令室に、息を切らした兵士が飛び込んできた。開かなくなった扉を、手で無理矢理開けると、兵士は司令室内にいる人々に向かって、叫んだ。

「本部を囲う結界が消滅!」

「それくらいわかっておるわ!」

司令室の中央で立ち尽くしていた司令官と思われる男が、飛び込んできた兵士に向かって怒鳴った。

兵士はそれでも、報告を続けた。

「と、同時に!海岸線より、多数の魔物が上陸!こちらに向かって進軍中!」

「何!?」

海から地上に上がった魔物の数、数百。そして、陸に上がると同時に、掲げられた旗。

「その旗の紋章から…水の騎士団と思われます!」

兵士の告げた言葉に、騒然としていた司令室が一瞬で、静まり返った。

「な、な、何だと!?」

絶句する人々。

「如何致しましょうか?」

敬礼して、兵士は訊いた。

中央に立つ男は苦々しく唇を噛み締めた後、叫んだ。

「き、決まっておるわ!」

そして、周囲を見回し、

「全員退避しろ!」

司令室にいるオペレーター達に告げた。

「兵士達は外に出て、時間を稼げ!」

伝令を告げた兵士を指差し、男は命じた。

「しかし、戦う武器がありません!」

「剣があるだろうが!」

即答した兵士を、男は怒鳴り付けた。


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