天空のエトランゼ〜赤の王編〜
本来ならば、痺れ動けないはずなのに…ここまで、動いたジャスティンの精神力に素直に凄いと、感心した。

しかし、呆れてしまう。

クラークは、ジャスティンな治療を終えると、肩を叩き前に出た。

「お前は、先輩の後を追え」

クラークの言葉に、

「またかよ!今度は、俺が残る!」

ジャスティンはさらに前に出ようとしたが、クラークは腕を横に出して、遮った。

「お前の為じゃない。ティアナ先輩が心配だ。今、あの人を失う訳にはいかない。お前が、フォローしてやれ」

「な、何でだよ」

ジャスティンは渋っていたが、ギナムは立ち上がったの見て、クラークは怒鳴った。

「早くしろ!」

こういう時のクラークに、何を言っても無駄であることを、ジャスティンはよく知っていた。

「一回、お前とは!きちんと話をするからな!」

ジャスティンは、クラークに背を向けた。

「どんな話か、楽しみにしておくよ」

「く、くそ!」

ジャスティンは走り出した。

クラークは振り向くことなく、足音が遠ざかっていくのを、耳で確認していた。

そんなクラークに、ギナムは再び翼を広げた。右側が燃えたとはいえ、まだ一部の羽毛は残っていた。

「友情ごっこですか?しかしね!私に、ここまでしたからには…貴方を始末した後、彼も殺しますよ」

ギナムは、クラークを睨み付けた。

「誰を殺すって…?」

クラークの雰囲気が、変わった。低く絞り出すように言った言葉に、ギナムに思わずたじろいでしまった。

「貴方と逃げたガキに、き、決まっているだろうが?」

「逃げた?」

クラークは眉を寄せた。

「な、何なんだ!」

ギナムは無意識に、後ろに下がっていた。

いつのまにか…クラークから漂う雰囲気が明らかに変わっていた。

「あいつは…逃げたのではない!俺の友達を愚弄するな!」

クラークの眼光に、ギナムは明らかに怯えていた。

しかし、魔神としての意地が、ギナムに攻撃を選択させた。
< 625 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop