天空のエトランゼ〜赤の王編〜
通路の途中、体力回復の為にカードを使用しながら走るティアナ。火傷は治らないが、痛みは治まった。

度を越えた疲労から、思考能力も低下していた。

ティアナの脳波を感じ、飛来するチェンジ・ザ・ハートが先程の戦いで来なかったことからも、疲労の酷さがわかった。

本当ならば、時間をかけて体力を回復したいが、ティアナはそれができなかった。

「!?」

なぜならば、ティアナの目の前に、肩から剣が突き刺さったまま倒れている剣司がいたからだ。

慌てて、ティアナは剣司に駆け寄った。

「グ、グレイが…先に行った。や、やつを止められなかった…。早く…やつを追ってくれ」

剣は、肩口から背中までを貫いていた。

「その前に…剣を抜いて、止血しないと」

ティアナは、剣司の前にしゃがむと、ジャスティンのくれたカードを剣が刺さっている部分に当てた。

「俺のことより!あいつを!」

「痛むわよ」

ティアナは剣の柄を握り締めると、一気に抜いた。その動作と同時に、魔法を発動させ、血が噴き出すのを防いだ。

「く!」

顔をしかめただけで、悲鳴を上げない剣司を見て、ティアナは流石だと思った。

常に常備している包帯を取り出すと、肩口に巻いた。

応急措置を何とか終了すると、ティアナは額から流れた汗を拭った。

「す、すまない…」

剣司は礼を述べた後、ティアナを見て、フッと笑った。

「やっぱり…あんたは、凄いな…。噂通りだ」

「え」

「ここにいるということは、騎士団長を倒したということだろ?」

「倒してはいないわ」

ティアナは、首を横に振った。

「それでも…凄い。生きてるってことがな」

剣司はまじまじと、ティアナを見た。

ブロンドの美しく、華奢な女性が、ここまで強いとは…信じられなかった。

しかし、ティアナとジャスティン達がいなければ、ここまで来れなかったのも事実だった。
< 628 / 1,188 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop