天空のエトランゼ〜赤の王編〜
谷間の間を流れる川の岸辺から、反り立つ崖までは、そんなに幅がない。

水かさが増した時に、削られたのか…丸みを帯びた岩が所々に転がっていた。

そんな岩の間に、女のエルフはいた。

(エルフ…。亡びた種族)

人間に似た姿と発達した知能と、自然に準じた高度な文明を持っていた…一族。

一説によれば…魔界との結界を造ったのは、人間の子孫ではなく…エルフの祖先だと言われていた。

人間と違い、魔力を持つエルフ。比較的…生物学的に、人間に近いことが、滅びた後の研究でわかっていた。

大量に残っていたエルフの遺骨のDNAを調べた結界である。

愚かな人間は、DNA鑑定が確定される前から、エルフの魔力を得るために、実験を続けていた。

つまり…エルフの女と結ばれることで、人間との間に魔力を持った新しい人間が生まれるかの実験だった。

自然の守り神であるエルフは、比較的大人しく友好的だった。

そこを利用したのだ。

その実験の結果…すべてではないが、人間とエルフの子供は生まれた。

しかし、その容姿を見た時…人間は、生まれた赤ん坊を、純粋な人間とは認めなかった。

その後も、人間に近付ける実験を行ったが…そうすれば、魔力が弱まることがわかった。

そうした人間の幾度のない実験の対象にされたエルフは…一部で人間に対する反乱を起こしたが…魔物のとの戦いを常に経験している人間の武力により、制圧された。

女の殆どが、人間にとられたエルフは…自然と数を減らしていった。

そして、数年後には…滅んだのである。

しかし、人間との間にできた子供達は…エルフの容姿に程遠いものから、心ある者達に保護され、その血を完全に絶すことにはならなかった。

人間の血が濃くない者は…ロストアイラインドに逃げ込んだ。

そのロストアイラインドにいた子孫達も、炎の騎士団により滅ぼされた。

それ故に、世界に残っているのは…純粋なエルフではなく、サーシャのように髪の毛など、一部で先祖の名残を残す者しかいないはずだった。



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