天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「どうなっている?」

駅に着いた高坂は、再び来た道を戻っていた。

途中カードが鳴り、通信をONにすると、舞の声が飛び込んで来た。

「部長!一応、式神が見失う寸前の画像を解析できました」

舞はディスプレイに、ロストするまでの数秒をコマ送りで再生していた。

消える寸前、画像がぼやけ、上に向かって線のような揺らぎがあった。

「恐らく…一秒もかからない程の速さで、飛び上がったとしか…思えません。助走もつけずに」

「何?」

舞の言葉に、高坂は眉を寄せた。

「そんなことが…人間にできるか!?」

「人間以外でしたら…」

舞はディスプレイから、顔を離すと、あらゆる可能性を探した。

テレポートでもない。

そういった反応がない。

人間がテレポートを使う場合、カードや聖霊の力を借りなければならなかった。

それに、発動した時に出る波動の紋章がない。

魔力を使った場合、多少なりとも空間に歪みのようなものが発生する。それを、分析し…解析するのだ。

「つまり…物理的な移動ということか」

高坂は、通信を切った。

歩きながら、少し考え込んだ。

「やはり…あの子は、人間ではないと」

そう結論付けたいが…高坂には、わからないことがあった。

(…あの自殺の意味は、何だ?そして、生徒会長を磔にした意味は?)

それらの疑問に答えがでないまま…高坂は、校門の前に来た。

「部長!」

輝が待っていた。

「見失ったよ」

高坂はフッと笑い、輝の横を通り過ぎた。

「あ、あのお〜」

輝は振り返り、高坂の背中に訊いた。

「彼女は一体…」

「そうだな…」

高坂は足を止め、

「ただ者ではないのは…確かだ」

それだけ言うと、

「お前も帰れ」

再び歩き出した。

「部長は、どこへ?」

「部室に行くよ。確認したいことがある」

高坂は、式神が残した画像をチェックしに行くつもりだった。

「お、俺も行きます!」

輝も歩き出した。

このまま帰るなど、できるはずがなかった。
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