天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「なぜ....そんな事を思い出す」

九鬼は、誰もいない廊下の闇を睨んだ。


(後悔か....)

あの頃の自分は、世界の強大さを知らなかった。

(自分の闇さえ拭えないのに....何を後悔し、何を迷うか!)

九鬼は、自分の体に喝をいれるように、手刀で目の前の闇を切り裂いた。

(研ぎ澄ませ!己を刃と化せ!闇が纏わりつく暇を与えぬくらいに!)

九鬼は、闇を睨んだ。

(闇夜の刃と化せ!)

すると、九鬼の手が輝き....一瞬空間を切り裂いた。

(うん?)

その瞬間、九鬼の目に焼き付いたもの。

見えたのは、コンマ0.0001秒かもしれない。

だが、九鬼の目は、その映像を逃がさなかった。

くっきりと鮮明に、脳に残したのだ。

「生徒の死体...」

脳に残った映像は、片足のない生徒の死体が廊下に横たわっている様子だった。

「馬鹿な!」

目を、今目の前に見える映像に切り替えた。

明らかに、死体はない。

しかし、脳の映像が見せたのは...この廊下だ。

なぜなら、今は使われていない教室の扉のシミや、天井の汚れが一致したからだ。

「く!」

九鬼は、残る映像と見える映像を分析するのに、脳をフル回転させた為、少し目眩を覚え...ふらついた。

「ま、まさか...」

ふらつきながらも、九鬼はそこから導かれた答えに絶句した。

「空間が違う?」

信じられない訳ではない。

自分も異世界にいるのだ。

しかし、これは世界が違う程の規模ではない。

「亜空間か.....」

だとしても.....今の九鬼に、死体が転がる空間に移動する術はなかった。

「だが!」

九鬼は真っ直ぐに立ち直すと、拳を握り締め、

「行かねばならぬ!」

決意を固めた。
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