天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「この先の山道に、多数の魔物が集まっているとの情報が入って来ました。このまま、あなた方だけで進むのは、危険です。迂回するか…もし、宜しければ、護衛をつけますが…」

極楽島がある海までは、ここから一本道しかない。

迂回する場合、学園まで戻り…東にある山を越え、さらに南下しなければならない。そうなると、倍以上の時間がかかる。

それに…。

「プッ」

前田は笑ってしまった。

護衛をつけると言われたからだ。

少なくとも、バスにいる数人は…ここにいる軍人より遥かに強い。

「?」

笑った前田に、軍人は眉を寄せた。

前田ははっとして、

「す、すいません!」

慌てて謝った。

「どうしますか?」

気でも狂ったのかと、心配そうな軍人に、前田は改めて言った。

「大丈夫です。私達だけでいきますので」

「え!」

驚く軍人に、前田は頭を下げ、丁重に断った。

そんなやり取りを、おかしそうに見ていたリンネの後ろに、ユウリとアイリが来た。

「リンネ様。宜しければ…我らで、駆逐致しますが?」

跪こうとした2人を、リンネは微笑みながらも、鋭い眼光を向けた。

ユウリとアイリは一瞬で、体が硬直した。

「余計なことはしないでね」

「は!」

2人は、頭を軽く下げた。



「…」

九鬼は無言で、山道に続く道を見つめていた。

そんな九鬼のそばに、理沙が来た。

別に、何を言うでもなく…ただ九鬼の背中を見つめていた。


「フン」

バスから降りずに、窓から外を見ていた真由は鼻を鳴らした。

そんな真由から、少し距離を取って…輝が見守っていた。

(なんか…気になる)

高坂から、真由を守るように言われていた輝だが、任務以上に、彼女のことが気になっていた。

まるで、犬が…落ち込んでいる飼い主の様子に気づくように、輝は真由から、妙な悲しみを無意識に感じ取っていた。
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