天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「行きましたね…」

ガクンと肩を落とす輝を見て、緑はため息をつき、

「し、仕方がないでしょ!あちら様は、赤の勇者こと赤星浩一と天空の女神よ!いつまでも、こんなところにいるはずがないじゃないの」

「だ、だけど…王パーツは、どうするんですか!魔王が、狙っているんですよ!いつ襲って来るか」

と言った後、ぶるっと身を震わせた輝を見て、高坂は笑った。

「魔王が狙ってるのは、すべての人類だ。遅かれ早かれ…魔王が本気になれば、人類は滅びるよ」

「そ、そんな〜」

泣きそうな顔をする輝。

そんな屋上の会話に、顔をしかめると、カレンは出口に向かって歩き出した。

「カレン」

アルテミアに貰った白い乙女ケースに目を奪われていた九鬼は、カレンの動きに気付き、思わず背中に声をかけた。

その声に足を止めたカレンは振り返ることをせずに、

「少し…学校を離れる。あたしが留守の間に、右足を奪われるなよ」

それだけ言うと、屋上から姿を消した。

カレンの行き先はわからないが、目的はわかっていた。

(強くなること)

九鬼はぎゅっと、白い乙女ケースを握り締めた。すると、乙女ケースは九鬼の手の中に吸い込まれるように消えた。




校舎を出て、一気に正門も越えたカレンの目の前に、妖精が飛び込んできた。

「!?」

カレンは少し驚いてしまった。まったく気配を感じさせなかったからだ。

「あのお〜すいません。大月学園って知りませんか?」

その妖精を見て、カレンは片眉を上げた。

(妖精!?それも、日本地区にはいない種族の…)

まじまじと自分を見ているカレンに、妖精は少し苛立ちを覚えながらも、愛想笑いを浮かべ、

「知りませんかね?」

もう一度訊いた。

その微妙な変化に、カレンは気付き、

「ああ〜。大月学園なら、この道を真っ直ぐ行って右手に…」

「だそうだ。ジェース」

カレンの説明の途中で、妖精が右上に顔を向けた。

その視線に気付き、目をやったカレンは絶句した。

右側にある民家の塀に、1人の男が立っていたからだ。
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