天空のエトランゼ〜赤の王編〜
「うう」

口ごもる後藤に答えを求めていないのか…男はまた歩き出した。

横を追い抜かれた後藤は下唇を噛み締めると、遠ざかっていく男の背中に叫んだ。

「だったら、どうしろというのだ!」

「決まっている!」

男は振り返ると、人差し指を銃に見立てて、後藤に向けた。そして、にやりと笑い、

「戦うのさ!」

「お、お前!」

「だから、警察を辞めたよ。人々が危険に晒されている時に、パニックを恐れて戒厳令をひく組織など、いても仕方がない」

「ば、馬鹿か!今、まともに機能しているのは、警察組織だけだぞ!」

後藤は歩き出した。

「だったら、作ればいい!」

男は、歩く速度を上げた。

「何をだ!」

「新しい防衛軍を!」

「な、な!」

防衛軍という単語に驚き、舌が回らなくなる後藤。

心を落ち着ける為に、何度が咳払いをした後、歩きながら答えた。

「防衛軍は、腐敗していた。多くの人が集まる組織は、必ず腐敗する」

「しかし!集まらなければ、一人一人の力はあまりにも無力」

2人が歩く道は、隠れ里から遠ざかるごとに、左右は緑しかなくなっていく。そして、その奥には魔物がいる。

行きは、住民が使う送迎バスで来た為に、ある程度安全だったが、今は危険である。

「腐敗しない組織をつくれ!水も流れなければ、すぐに淀んでくる。組織も同じだ。上を固定すれば、濁ってくる。つねに、上を代えればいい」

「そんなことできるか!」

「できるさ」

男は道の先を睨みみながら、

「権利者とは少し違った…象徴とでもいうべき存在を、担げはいい」

「昔いたという人神か?」

「そんな飾りではない。それに、もし…あの人がそうなったとしても、ずっと同じ場所にはいないだろうな」

「誰だ?」

「1人しかいない」

男は足を止めた。そして、上着の中から銃を取り出した。

「うん?」

後藤も、前を睨んだ。

今までは、隠れ里から一本道だったが、ここから先は急なカーブで先が見えなかった。
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