白兎物語
謎の老婆ともう1匹の兎
自らの命と引き換えにウサ美たちを救った赤ウサ。

悲しみの中、助かったウサ吉はウサ美の意識を取り戻す事に成功するが、ウサ美は橋から落下した時の衝撃により記憶喪失になってしまっていた。

あたりはすっかり夜になり、2匹は川原でたき火にあたり濡れた体を暖めていた。

ウサ美「あの…私どうしてこんな所にいるのでしょうか?」

たき火の炎を見つめながら哀しい顔でつぶやくウサ美。

ウサ吉「何も覚えてないんですか?」

ウサ美「野原を歩いていて綺麗な花を見つけたまでは覚えているんですが、そのあとの事は…」

どうやら魔王に襲われた以降の記憶をすべて失ってしまっているらしい。そのためか言葉も元のウサ美の口調に戻っているようだ。
ウサ吉はこれまでの経緯をウサ美に話して聞かせた。

ウサ美「…そんな事が。…とても信じられないけど、あなたの目は嘘を言っていない。信じます。」

ウサ吉「姫…」

ウサ美「…私が汚い言葉を使っていたなんて恥ずかしい…。それに助けてくれた赤ウサさんの事を忘れてしまっているなんて…、ウサ吉さん、私記憶を取り戻したい!」

ウサ吉「大丈夫です姫。我々が会いに行こうとしていた老婆は大変強力な力を持っているらしいので、姫の記憶を元に戻す方法を知っているかも知れません。今日はもう遅いですから明日あかるくなったら行くことにしましょう。」

ウサ美はひどく疲れていたのと、ウサ吉の言葉に少し安心した事もあっていつの間にか眠ってしまっていた。

ウサ吉は姫を守るべく朝まで一睡もしなかった。
そして翌朝早く2匹は出発し、その後3日をかけてようやく謎の老婆の住むといわれる洞穴にたどりついた。
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