先生の青




学校から家に帰る



門の向こう
父と母、兄、父方の祖母
5人しか住んでいないのに
10人は住めそうな四角い屋敷



足元に視線を落とし
コンクリートに走る
一直線の門の溝


それは まるで境界線だ。




外から家へ帰る時
その境界線を越えるのに
私は何分も時間が必要になる




スクールバッグを抱きしめ
不審者みたいに門の前
立ち尽くす。




今日、英雄(ヒデオ)さんは
家にいるのかな――――――




…………ザッ
家の方から足音がして
ビクッとなる



「………お嬢さま?」



顔を上げるとお手伝いさんの
チヨさんと目が合う。



「こんなところで
どうなさったのですか?」


小柄な身体に柔らかい物言いが
いつも素敵だなと思う。


チヨさんはパーカーを着て
トートバッグを肩に掛けてた
もう帰るんだ。



「奥さまがお帰りを
お待ちですよ?」



「………他…の人は?
…ひでお……
お兄さんとか、いないの?」



「大奥さまと奥さまだけです。
旦那さまはお仕事ですし
英雄お坊ちゃんも
お帰りはまだですよ」



……………ほっ。



「わかった、ありがとう。
チヨさんも気をつけて
帰ってくださいね。
ご苦労様でした」



頭を下げると
チヨさんも頭を下げ
境界線を越えて
自分の家に帰って行く



私も[お家]に帰らなきゃ




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