アンチバリアフリー
くだらない自分ルールのはずだったのに思いがけず本当に扉が開いた。
思わず頬が緩む。
しかし現実はそんなに甘くはない。
入ってきたのは遠藤だった。遠藤は私と目が合うと私の心を読んだかのようにニヤニヤと笑いながらこっちの方へ歩いてきた。

「な、なによ?」

「悪かったなおれで」

「なんでわかるのよ?」

「おまえの顔に書いてあるからだよ」

反射的に顔に手をやってしまい、それを見て遠藤は肩を震わせながら笑っている。
顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。
お願いだから今だけは戻ってこないで!
こんなときだけ望みは叶うものだ。
遠藤は目に涙を浮かべて小刻みに震えながら笑いを堪えている。
そして私の肩を軽く叩いてゴーサインを出した。
こんなときだけ遠藤は役に立つものだ。
私は鏡で顔を確認してからそっと席を立った。
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