かさぶたと絆創膏

「家出してきたんだ」


何でもない、澄ました顔で答えた俺を青はどんな顔で見ているだろう。


真面目で頭の良い俺が、家出なんてきっと不似合い。


正面に向けていた視線をゆっくり青に戻せば、


「だったら俺ん家来なよ！ 俺一人暮らしだから遠慮しなくて良いし」


何故か俺の予想とは裏腹に、嬉しそうに顔中で笑ってた。



……驚いたのは青じゃなくて俺の方だった。


目をまんまるにして青を見つめる俺にカラカラと声を上げて笑い、


「なんで笑ってんの？」


「だって、秋って真面目だからさ。ちゃんと息抜きっていうか……ガス抜いてるんかなーって心配してたんだよね。俺」


やっぱり悪びれた様子なんて全く見せない。
何が嬉しいのか、ホントに嬉しそうに笑ってる。


「だから良かった！ 秋だってムカついたり落ち込んだりするんだなって安心した」


「…………」


ムカついたり落ち込んだり……そんな負の感情に、良かったなんて言葉をかけるのはコイツくらいだ。


それに、


「……ありがと、青」


「んっ？」



そう言って俺を救ってくれるのも、きっとコイツだけなんだ……。