かさぶたと絆創膏

3月29日。

平凡だったけどそこそこ楽しかった高校生活は、少し前に行われた卒業式で幕を閉じた。


4月から始まる新しい環境のコトを頭の片隅に置き、長い春休みをぼんやりと過ごしている。


書類上正式に高校卒業の資格を得るまで、残り三日になっていた。


そして、


「……そう、か。寂しくなるね」


二年生の夏から始めたコンビニのバイトも、後三日で卒業だ。


いつものようにバックヤードに現れた彼にそれを告げると、しゅんと悲しげに目を伏せた。


……ホントこの人は子どもみたいだな。


飾らなくて自然で……だから嫌でも目がいってしまうんだ。


半年前に入った一個年上の後輩に、儀式的頭を下げてみせる。


「お世話になりました」


「はは。よく言うよ。嫌味?」


「そうです。これからはレジをピーピー鳴らしても助けてくれる人、居ませんからね」


自嘲気味に笑った彼に被せて、更に嫌味っぽく言ってみる。


自分でもわかってる。
可愛くない女の子だ。


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