かさぶたと絆創膏

side雪


わたしを抱き締める間際。
見えた秋さんの顔は、なんだか必死に見えて……愛おしかった。


わたしはわたしとして、秋さんに愛されてる。



「しゅ、秋さん……ちょっと苦し」


「不意打ちで逆プロポーズしてきた罰」


「えっ!?」



幸せな苦しみの中で耳元の声がこう囁き、チュパッと軽く耳朶を甘噛みしたから一度に二度驚いた。


びっくりして思わず秋さんから体を離したら、全身真っ赤なわたしの指に秋さんの長くしなやかな指が絡む。



「ねぇ、雪。雪がいつか結婚する日が来たら、その隣は……俺に居させてください」


「ぁっ……」



真っ直ぐにわたしを見つめる瞳に捉えられて息を飲む。



それがプロポーズだとわかるまでに10秒はかかった。



マヌケな顔してたんだろうな……。



「……ダメ?」


マヌケな顔で固まってたわたしに、秋さんの表情がにわかに曇る。


だから慌てて首を左右に振った。


「ダメ……じゃない。良かった」


代わりじゃないわたしを秋さんが必要としてくれる未来が単純に嬉しい。



それ以上に秋さんが大好きで、秋さんもわたしを愛してくれてる事実が嬉しくて仕方なかった。



秋さんの唇はわたしの心配を吹き飛ばすように、もう一度ちゃんと口付けをくれた。




幸せな恋はきっと、死が二人を分かつまで続いていく……。



*幸せな憂鬱 終*
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