かさぶたと絆創膏

それを説明しなかったのは、面倒くさいのが半分。


もう半分は、さっきの先輩が……バッグヤードの彼にポロッと漏らして欲しいっていう無駄で淡い期待感と馬鹿な強がり。



お泊まりをするような相手くらい居るよ。



そんな虚勢くらい張ったって、許されるでしょ。


「ふっ……」



報われない気持ち。


それを告げる勇気の無い自分に言い訳が欲しかった。


「ぅ……」


さっき引っ込んだ涙がぶり返してくる。

頬を伝う雫が肌寒い夜の空気に触れて、みるみる冷えていった。



こんな風にわたしのやりきれない気持ちも、冷めてくれれば楽なのに。



お兄ちゃんのマンションに着くまで後五分。



自分を泣き止ませる為に濡れた親指で、お兄ちゃんにメールを送った。



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