風の旅
瑞姫を追い詰めたのは、俺が知らない何かと、俺だ。

俺、でもあるんだ。

瑞姫がかたくなにしゃべるのを拒否することをあまり考えずに先のことばかりにとらわれすぎた無神経な俺だ。

結局1番近くにいたくせに、何してたんだ俺は。

『パシャ・・・』

1時間もそうしていたか・・・。

水がはねる音がしてはっとすると、瑞姫が目を覚ましていた。


「―――!」


そこで、俺の緊張の糸がぷっつり切れた。

もう何処にキスしてるのかわからないくらいに、瑞姫にキスした。

「・・・?・・・っ、は、ふ」

状況を理解していない瑞姫の苦しそうな息使いだけが聞こえる。

それが、瑞姫が生きているということの証拠のようで、ずっと聞いていたくなった。

瑞姫が弱弱しく俺を叩いて限界を知らせるまで、それは続いた。

全然足りなかったけど、仕方なくキスをやめて瑞姫を見ると、泣いていて。

でも、なんだかとても嬉しそうな顔をしていて。

瑞姫の方からしがみついてきたから、勝手にそれを口実にして、自分が満足するまでキスをした。





*
< 16 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop