風の旅
「・・・!?」

思いっきり声を出して叫びそうになったけど、寸前のところでどうにか踏みとどまる。

これって、さっき噴水の縁に座ってた人だよね?

幽霊とかそういうたぐいのものではなく、ちゃんと、生きている人間だよね?

そう思ってからの行動は早かった。

びっくりして、怖くなったから。

幽霊とかその類と、質が全く違う、人が、目の前で死ぬという、恐怖。

大好きだったばあちゃんが息を引き取ったときのような。

「何してるんすか!」

ざば、と女性をひきあげると、意識はあるようで、ゆっくり、うっすら瞼をあげる。

けれどその表情や顔色は死人のそれ。

「しっかりしてください!具合でも悪いんすか!?」

恐怖と驚きから必死で、大声で言い放った俺の言葉を無視して、彼女は俺に視線だけ合わせてきた。

不思議そうに俺を見ながら、とても悲しそうな眼をするだけだ。

「―――」

血色の悪い、紫を通り越して白くなっている唇が、うっすら開くのを見ていると何もしゃべらないまま、女性は脱力―――気絶、した。

え、と?どうすればいい?

とりあえず、人命救助?

生きてるもんね?

恐怖からパニックになった俺は、とりあえず、その女性を抱き上げて、家までの30メートルを、全力疾走したのだった。






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