短編集


「ここ、ここだよ」

対して大きくない女の声がやけに耳に纏わり付く。視線を高く上げて、さ迷わせる。
ぶつかった女との視線にドキリとした。

それは、ときめきなんていう可愛いものじゃなくて。ただ底知れぬ恐怖。

「お兄さん、恐いの?」

どこか愉快げに話す声に、頭の中で警鐘が響き渡る。
体は縫い付けられたみたいにそこから動かない。いや、動けなかった。


「だーいじょうぶ、少し、私の遊び相手になってくれればいいの」

その声を聞いたのを最後、後ろからやってきた鈍い痛みに意識を手放した。




女の愉しそうな笑い声と、不気味なくらいに真っ赤な夕焼け。
次に見たのは、それだった。

「あ、起きたのね?それじゃあ、遊びましょうか。可愛い可愛いあたしのお人形さん」



゙囚われのマリオネッド

「大丈夫、少しの間だけよ。だって、みんな途中で壊れちゃうんだもの」

(さようなら、僕の世界)




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