父の背中
父の背中

ボクは20歳。



幼い頃に母を亡くした。

それは、まさに我が家にとって最大のショックだった。

それからだった。



我が家は初めて本当の一つになれたと思う。

ボクはいつか、家族を支えたいと高校をやめて働きに出ようとするが、父は反対する。



「せめて、お前も大学に入りなさい」
と。


ボクには3つ上の姉がいる。

姉は手先が不思議なぐらい不器用。

それは、母がまだ生きてた頃からよく困らせていた。

その姉が大学を卒業してから働きに出る。


そんな、家族のために働ける姉が羨ましかった。



父は昔はサラリーマンで、帰ってくることも遅かったが、今は時間を見つけては早く帰ってきてくれる。



そして、疲れてるのにも関わらず、慣れない家事をやってくれた。


時には祖母も手伝ってはくれたが
「いつかはボクも1人暮らしが出来るようにしないと」


手に生傷を作りながら料理を作る父の背中。


それを聞いた姉は

「私は結婚はしない」
と言う。



その時の背中はどこかが寂しそうだった。

ボクも短期大学を卒業してようやく家族のために働けると内心喜んだ矢先。


姉が父に
「私結婚したい」


すると、父は何も言わず
「洗濯物を取り出さないと」
といい、ベランダに行く。



慣れた手つきで洗濯物を取り出す。

その手は静かに震えていた。


「これでお母さんに少し恩が返せる」

今にも泣きそうな、小さい声でつぶやく。



父の背中。


昔はあんなに威厳があって、大きく見えた背中が今は小さく、儚く見える。


その背中でボク達を助けてくれた。

今度はボクが助ける番。



小さくとも、大きな誇らしげな父の背中をボクは好きになっていく。

ボク達をここまで育ててくれてありがとう。



ーありがとうー



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